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ヤマモミジの1曲作りの作品の1例である。 1曲作りとは特に定着した技法ではないが、ちょうど指を90度に曲げたような素材の利用法である。 むろん、枝も葉もない状態から作り上げていく。 例えば庭木や山樹の1部の、折れ曲ったような幹部分を取り木するわけである。 立ち上がりから、幹の左の切断面までが以上の1曲ある幹部分。 取り木による発根である。 最初は88年だが取り木はその4年程前。 中品樹として趣味家が作っており、その中品の上部を切り飛ばして小品化したものである。 大樹の相で野趣のある模様樹がその目的である。 枝の構成は幹の右側の1枝(呼び接ぎ)、左側の切断面の下の1枝、そして頭部の3本が基になっている。 頭部はーmちかく走らせそれを切り込む。 基部を太らせたいためである。 頭部の基にも小枝が残されている。 短節化した部分を使用していることに注目していただきたい。 以前作出していたような、完壁な構成の模様樹とはやや違い、大型の動きのある幹の強い曲が特徴。 ひとつのタイプを完成すると、次のステップにむかうのが河村さんの方法で、この樹はその傾向が現れている。 ここでは茶とウメモドキを紹介したい。 茶は在来種の茶の樹である。 90年ごろの作で、根伏せによる方法。 茶の樹は鉢植えに多くありそうで少なく、小品の味のある樹もあまり見かけない。 掘り上げた茶の樹の根の曲のある1部分の利用である。 自然に振れ、1回転したような根の部分を、足元として構想したものである。 茶は実生苗も含めて(挿し木ではよけい)立ち上がりが直線になりやすい。 根伏せの可能性が高いならば、趣味家も挑戦してみる気になるだろう。 管理は春の芽は6~7月まで伸ばし放し。 ここで切り込み、基を針金で曲付けする。 2番芽が次に吹く秋まで再び伸ばし放しにする。 秋に行う2度目の切り込みと針金掛けによって、形を作っていくのである。 注意点は病害虫.ご柄気がよく出るので、赦布(ランネート、ベンレートなど薬品を変えながら病気、虫が耐性を作らないようにする)を充分に。 ウメモドキは大型の小品からの改作。 頭部を飛ばし、模様樹だった樹形のーの枝を左に伸ばし、印象を変えている。 この差し枝風の枝の作りに注目していただきたい。 写真ではやや判かりにくいのだが、太幹で単幹の灰色の幹によく合う流れとなっている。 上下に強く振れたり、あっさりと伸ばしていくバランスも参考になるだろう。 幹の右側の枝は短く庭木の新梢の曲付けした素材から仕立てた作品を紹介したい。 文字通りただグニャグニャと曲げた1本の枝から、約10年で作り上げている。 その最初の姿。 約2年枝である。 曲の基部のコブのような部分が、現在の立ち上がりから折れ曲がる太い幹である。 その後根接ぎ、呼び接ぎなどをして、現在の足元の座は舫㎝。 モミジ作りのなかでも傑作のひとつ。 作出の記録としても極めて珍しい、技術的な積み重ねで作られている。 |